アラサー高学歴ニートの軌跡

アラサー高学歴ニートが、日々の行動や考えを記すブログです。

アニメ「伊藤潤二コレクション」各話を勝手に考察&解釈してみた

リアルタイムで観た人はかなり限られるだろう。ただ、クオリティは相当高いし原作に対して極めて誠実に制作されていると思う。(注:筆者は原作未読)

 

各話を詳細かつ身勝手に考察&解釈していくので、読みたい方だけ読んでください。ネタバレは極力控えたが、ネタバレになっている話も多々あります。ご注意を。

 

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目次

 

1話

 

「双一の勝手な呪い」

 

どんな怖い話が展開されるかと期待していたら、大爆笑の嵐だった。強いて言うなら、双一を捕まえようとした地主の爺さんが一番怖かった。双一は、気に入らない同級生を冬眠させたり、自分をイケメンだと思い込んでいたり、十人並みいや百人並だと自慢したり、蜘蛛を姉に見せつける割には蜘蛛が苦手だったり、鼻声で電話しておびき寄せたり、捕まって猫のふりをしたり、礼はいらないと言いながら手の動きは明らかに見返りを要求していたり、思い込みで恩を着せたり、まあそういう奴である。

 

それでも俺は双一を可愛いと思っているし、双一は愛おしい。

 

いるいるこんな奴って奴を何人も並べて、その特徴を全部混ぜ合わせて出来たのが双一というキャラなのだろう。人を困らせたり、人が困っている様子を観察するのが双一の生きがいだ。どこかPSYCHO-PASSに出てくる槙島聖護を思わせる。俺が心の奥底でやりたいと思っていることをサラリとやり遂げてしまう、それでいてどこか抜けている。双一はある種憧れでありながら、とても身近な存在に思える。他人を冬眠させたり、トイレに閉じ込めて悪夢をみせたりはするが、他人に危害を加えるようなことはなく、滑稽なイタズラばかりする。要するに無邪気な子供だから、こんなに愛おしいのだ。

 

「地獄の人形葬」

 

めちゃくちゃ笑える話の後に、短いながらも怖い話を持ってきた。おぞましい生物に成り果てた娘は怖いが、散々笑った後だから余計怖く感じる。笑えるだけじゃないぞ、恐怖は突然襲ってくるぞ、というメッセージが感じられる。

 

2話

 

「ファッションモデル」

 

モデルの過去を丁寧に描き、視聴者の同情と恐怖を誘うのが通常のホラー。しかしこの作品は、モデルの過去は一切語られず、人食いモデルが猛スピードで追いかけてくるという恐怖を重点的に描いている。と見せかけて、明らかに奇怪なモデルを興味本位で映画の出演メンバーに加えてしまった岩崎が一番恐ろしい。真の恐怖は、人間の好奇心なのだ。

 

「長い夢」

 

「人類が永遠の夢を見られたら、死の恐怖から解放されるのでは?」という想像力が生み出した作品だと思う。実現したら、それこそホラーだぞという警告でもあるのか。

 

3話

 

「四つ辻の美少年」

 

辻占の美少年の正体は一切語られなかった。恋に夢中な男女の視野の狭さ、噂の怖さがテーマになっていると思われる。

 

「なめくじの少女」

 

おそらく、原作者の天才的インスピレーションからこの作品は生まれたのだろう。顔が殻で、なめくじ少女の本体は口から出てくるなめくじである。どういう意図が込められているか、俺には分からない。なめくじ少女の見た目は実にグロテスクだが、ベクシンスキーの絵画に通じるものがある。

 

4話

 

「寒気」

 

このアニメにはありがちだが、謎が多く何が言いたいか分かり難い作品である。

 

梨奈は生まれつきの病気で床に臥せっている。翡翠が近くにあると梨奈の体に穴が開くが、それ以上の影響はなさそう。翡翠がどこかへ行くと梨奈も元気になったという描写から、病の原因は何らかの呪いであるという考えが読み取れる。

 

「あやつり屋敷」

 

操り人形を粗末に扱うと、本人はもちろん周りの者にも報いがやってくるぞという話。

 

楽だからとあえて天井から糸で吊られている兄たちは、自分の意思で動いていると思い込んでいた。しかし、いつの間にか本当の操り人形になってしまった。主客転倒が妙味である。

 

我々は自分の意思で行動していると思っているが、実は誰かの意思で操られているかもしれない。自分の意思と誰かの意思は、よく似ていて見分けるのが難しい。だからこそ、他人任せにせず自分で考えて行動しよう。そんなメッセージが込められていると思われる。

 

5話

 

「押切異談」

 

異次元と通じている押切宅が舞台。異次元の押切は、異次元にいる藤井と青山に身長が伸びる薬を投与したが、失敗。こちらの世界の藤井に投与しようとしたところを、こちらの世界の押切に阻止され、身長が伸びる薬を投与されてしまう。結果として異次元の押切は骸骨になり溶けてしまった。

 

身長が伸びる薬は、つまり死ぬ薬なのだ。押切は低身長がコンプレックスなので身長が伸びる薬は喉から手が出るほど欲しいはず。しかし、その薬を飲むと死ぬ。異次元の押切が自分に投与する前に他人で実験したのは、その薬が毒だと無意識に理解していたからと考えられる。異次元の押切は、コンプレックスが殺意に変わるほど精神に異常を来たしていた。もはや、異次元の押切はこちらの世界の押切の深層心理を擬人化した存在なのかもしれない。

 

「布製教師」

 

再登場の双一が大活躍。今回は、メガネの少年視点で双一が描かれた。今度は嫌な人間が布製の人形になってしまう呪いだ。しかも、釘を口から出したり、デタラメな授業をしたり、逆らったらグラウンド100周をさせる効果まである。明らかに、双一の欲望を反映している。自分が先生だったらこうしたい、こういう先生だったら楽なのに、という双一のロマンが感じられる。

 

尻を見られて顔を赤らめるなど、双一の恥ずかしがり屋な一面も描かれた。双一の人間らしさが描かれ、視聴者は双一への親近感を一層強めただろう。

 

 

布製の人形が全て壊れた後、柳田先生が公園でぼんやりと焚き火をしていたと判明したのが印象的である。今回の呪いは、対象の意識を本体から分離する呪いだったわけだ。

 

6話

 

「隣の窓」

 

おばさんが「坊ちゃん」とひたすら語りかけてくる。日ごとに距離が近づくのが怖かった。結局、窓が張り出している?だけだったようだ。単なる幻聴か。

 

「緩やかな別れ」

 

死者との別れを惜しむ考えから、戸倉家では死者を「残像」にするという伝統的儀式が行われていた。20年で完全に消えるのは、20年が死者を完全に気に留めなくなるラインだからである。人の噂も75日、という諺を思い出させる。

 

家族の死を長い年月をかけて受け入れる、という精神は極めて日本的な感じがする。原作者の死生観が伺えるいい作品。

 

7話

 

「中古レコード」

 

死後の歌姫の声が録音されているレコードが、実はレクイエムだったという話。死者が出るほど激しいレコード争奪戦が繰り広げられる、と予言されていたかのようだ。

 

「道のない街」

  

道のない街は、民家を通行人が行き来するのでプライベートのない空間だ。道のない街は集合意識を具現化した空間と思われる。皆の無意識がむき出しになるから、プライベートがないのは当然。個人の無意識が集合した結果として、無個性の個人の集合となったのが集合意識である。すなわち、仮面をつけた人々は個性を喪失した人々を意味しているのだ。

 

仮面をかぶると人は本音が出やすくなる。つまり深層心理だ。仮面をかぶった者の集合は深層心理の集合であり、すなわち集合意識である。

 

主人公のサイコが「心理的」を意味するなら、以上の推論は正しいはずだ。

 

8話

 

「ご先祖様」

 

先祖代々の記憶が、ムカデ状に連なる頭蓋骨で表現された作品。一見攻殻機動隊を彷彿とさせるが、記憶がネット上ではなく頭蓋骨というアナログな形で保存されている。

 

怖いというより、日本独特の「家」を守るという思想が色濃く反映された作品である。だから、息子への結婚しろ圧力が強かったのだ。

 

「サーカスが来た」

 

団長が実は人の魂を集めており、ショーをやった者は死ぬようになっていたという話。

 

サーカスの危険性、スターというワードの死語感が改めてクローズアップされている。

 

団長はブラック企業の社長であり、人がどんどん死んでいくのは団長の無茶な要求のせいである。その構造に気づいているのはヒロインだけ、というのが最も恐ろしい。あるいは、死んでいった団員も薄々気づいてはいたのだろう。しかし、目の前の闇を見えない振りしてしまうのが人間である。この作品は、視聴者への警告をしているように思える。

 

9話

 

「画家」

 

かの有名な富江が出てくる話。

 

美を追求して狂う芸術家がテーマ。無限に増殖する富江は、そんな芸術家が不滅であることを示唆しているかのようだ。

 

「血玉樹」

 

ある青年の家を訪れると、体に果実ができやがて衰弱する話。体にできた果実を食べれば助かるが、血を無性に欲しがるようになってしまう。この話の裏テーマは「生きるためには犠牲が必要」である。

 

10話

 

「グリセリド」

 

ひたすら油や脂の気持ち悪さが描かれていた。兄の陰湿さ、父の臭いも気持ちが悪く、嫌悪感は本作品でも随一。

 

焼肉店で出していたとっておきの肉は、実は兄の肉だったと思われる。兄がその直後から居なくなっているし、いずれ父は兄を殺すだろうから。最後、何かを切り落とす音がしていたが兄の肉の残りだろうか。

 

「橋」

 

過疎の村の奇習は、最後の村人である祖母の死をもって消滅したのだろうか。6話の「緩やかな別れ」では、死者が家に留まり続けるのが良しとされていた。しかし、今回は死者が速やかにあの世に行くのが良しとされている。

 

今回は珍しくわかりやすいハッピーエンドにはなっていたが、実のところ視聴者の死生観を問うという点で視聴者に解釈を委ねる話と思う。

 

当事者の高齢化で伝統が消滅していく現状を描いた話でもある。

 

11話

 

「超自然転校生」

 

束山が転校した途端、超自然現象が続発し、再びどこかへ転校した途端それらの現象がやんだ話。

 

束山を求めてさまよう北川は、超自然現象を求める人間のサガを象徴しているようだ。

 

「案山子」

 

墓に案山子を立てると案山子が死んだ人間そっくりになる話。案山子は死んだ人間の欲望を反映した行動をとり、欲望を果たすと表情がなくなり倒れる。案山子は一種の供養なのだろう。

 

12話

 

「潰談」

 

蜜を舐めているのを気づかれたらたたき殺される、という話。

 

蜜の異常な中毒性、蜜を舐めすぎると味覚が破壊される点から考えると、蜜は麻薬である。麻薬中毒の恐ろしさを戯画化したのが本作品である。

 

「噂」

 

双一で始まって、双一で終わる。様式美である。今回の双一は呪いではなく噂を駆使した。呪いを自ら止めたのか、誰かに禁止されたのか。双一の勝手な噂は一つだけ当たっており、当たったが故に破滅へと至るのが皮肉である。

 

 

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